
鏡を見るたびに気になるほうれい線。ファンデーションが溝にたまったり、写真に写ると疲れて見えたりすることから、治療を検討する方は少なくありません。糸リフトはほうれい線治療の選択肢としてよく名前が挙がりますが、実際にはたるみの原因によって効果の出方が大きく異なります。今回は糸リフトがほうれい線にどのように作用するのか、その仕組みと向き不向き、他の治療との使い分けについて解説します。

ほうれい線ができる原因:たるみ・コラーゲン減少・骨密度低下
ほうれい線は単一の原因で生まれるわけではなく、いくつかの要因が重なって形成されます。
まず大きいのが皮膚のたるみです。頬の皮下脂肪や表在性筋膜が加齢とともに下垂し、鼻の脇から口角にかけての溝として現れます。次に真皮のコラーゲンやエラスチンの減少です。20代をピークに生成量が徐々に減っていくため、肌自体のハリが失われ、表情を動かしていない時にも溝が目立つようになります。
さらに見落とされがちなのが骨格の変化です。上顎骨は加齢とともに吸収が進み、骨密度が低下することで頬を支える土台そのものが痩せていきます。土台が下がれば、その上にある皮膚や脂肪も一緒に下方向へ動くため、ほうれい線がより深く刻まれる結果につながります。加えて頬の脂肪が厚い方や、表情の癖で笑いじわが定着しやすい方は、若い年代でもほうれい線が目立つことがあります。
このように原因が複数存在するため、まずは自分のほうれい線がどの要因によって強調されているのかを見極めることが、適切な治療選びの出発点になります。
糸リフトがほうれい線に効く仕組み(引き上げ+コラーゲン刺激)

糸リフトは、コグと呼ばれる棘状の突起がついた医療用の吸収糸を皮下に挿入し、下垂した皮膚や脂肪を物理的に引き上げる施術です。作用は大きく二つに分けられます。
一つ目は機械的な引き上げ効果です。糸のコグが皮下組織にひっかかることで、頬の脂肪を高い位置へ再配置し、たるみによって深くなったほうれい線の溝を目立ちにくくします。施術直後から変化を実感しやすいのが特徴です。
二つ目はコラーゲン生成を促す作用です。糸を挿入すると、周囲の組織に軽度の炎症反応が起こり、これに応じて線維芽細胞が活性化し、コラーゲンやエラスチンの産生が促されます。糸が体内で吸収されていく過程で組織が徐々に引き締まり、肌そのもののハリが底上げされていきます。当院で採用しているアンカーXや、五角形のコグと立体的なメッシュ構造を持つ第四世代の糸であるアルテミスリフトやヴィーナスリフトは、切開を伴わない先端形状のため、引き上げ力とダウンタイムのバランスを考慮した設計になっています。
つまり糸リフトは、即効性のある物理的な引き上げと、時間をかけて表れる肌質改善の二段構えでほうれい線にアプローチする施術といえます。
効果が出やすいほうれい線のタイプと出にくいタイプの違い
糸リフトはすべてのほうれい線に同じように効くわけではありません。原因によって効果の出方に差があります。
頬の脂肪が下垂したことで生じるたるみ由来のほうれい線は、糸リフトとの相性が良いタイプです。物理的に脂肪を引き上げることで、溝そのものが浅くなる変化を実感しやすくなります。一方で、骨格的な要因、たとえば鼻翼基部の支えが低く生まれつき溝ができやすい方や、頬骨から口角にかけての骨の陥凹が強い方の場合、糸リフトだけでは十分な変化を得にくいことがあります。骨格が原因の溝は、皮膚を引き上げても土台自体が変わらないためです。
また、表情筋の動きによって刻まれた静的なしわ、特に長年の癖で皮膚に折り目として定着してしまったタイプも、糸リフトの引き上げ効果だけでは改善が限定的になる場合があります。口周りは表情の動きが多い部位のため、糸で引き上げても元の位置に戻りやすいという特性もあります。
このため、カウンセリングでは実際に頬を指で持ち上げてみて溝がどの程度改善するかを確認することが、糸リフトの適応を判断する上で重要な目安になります。
効果の持続期間と維持のための通院頻度
糸リフトの効果持続期間は、使用する糸の素材によって異なります。一般的にPDO素材の糸は半年から一年程度で吸収され、その間は引き上げ効果とコラーゲン生成による肌質改善が続きます。効果が完全になくなるわけではなく、糸が吸収された後も新しく生成されたコラーゲンによる引き締まりはある程度持続します。
ただし、老化のプロセス自体は止まらないため、時間の経過とともに再びたるみが進行していきます。当院では、一度の施術で高額な治療を集中させるのではなく、定期的なメンテナンスを重ねてハリを積み立てていく考え方、いわばコラーゲン貯金を治療の軸に据えています。糸リフトを軸としながら、半年から一年に一度のペースで状態を確認し、必要に応じて追加の施術やエネルギーデバイスによるメンテナンスを組み合わせることで、緩やかなたるみの進行を抑えやすくなります。
通院頻度は肌の状態や生活習慣によって個人差があるため、施術後の経過を見ながら医師と相談して次回のタイミングを決めていくことをおすすめします。
ほうれい線へのヒアルロン酸注入との違いと使い分け

ヒアルロン酸注入と糸リフトは、どちらもほうれい線治療でよく用いられますが、作用の仕方が異なります。
ヒアルロン酸注入は、へこんだ部分に直接ボリュームを補うことで溝を埋める治療です。注入直後から効果が分かりやすく、施術時間も短いという特徴があります。一方で、たるみそのものを引き上げる効果は限定的なため、頬の下垂が主な原因になっている場合は、溝を埋めても数か月でボリュームが吸収され、たるみが再び目立ってくることがあります。
これに対して糸リフトは、下垂した組織を引き上げることでほうれい線の根本的な原因であるたるみにアプローチします。溝を埋めるのではなく、溝ができる原因となっている頬の位置そのものを変える治療です。
そのため、たるみが主な原因の場合は糸リフト、頬の脂肪量や骨格の陥凹による溝が主体の場合はヒアルロン酸注入というように使い分けるほか、両方の要因が重なっている方には併用が検討されることもあります。どちらが適しているかは、実際の肌状態を診察した上で判断することが望ましく、カウンセリングで原因を丁寧に確認することが治療選択の精度を高めます。
主な違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 糸リフト | ヒアルロン酸注入 |
| 主な作用 | 組織を引き上げる | 溝にボリュームを補う |
| 効果を感じ始める時期 | 施術直後から | 施術直後から |
| 得意なタイプ | たるみ由来のほうれい線 | 脂肪量・骨格由来のほうれい線 |
| 施術時間の目安 | やや長め | 短め |
| ダウンタイム | 腫れ・つっぱりが数日〜2週間程度 | 腫れ・内出血が数日程度 |
| 効果の持続傾向 | 半年〜1年程度、糸の素材により変動 | 数か月〜1年程度、部位により変動 |
どちらか一方を選ぶだけでなく、原因に応じて役割を分担させる考え方も選択肢の一つです。
ハイフとの組み合わせで効果を高める方法
糸リフトは単独でも効果が期待できますが、超音波エネルギーで皮膚の深部を引き締めるハイフ(HIFU)と組み合わせることで、相乗的な効果を狙うことができます。
糸リフトが皮下組織を物理的に引き上げる治療であるのに対し、ハイフはSMAS層と呼ばれる筋膜層に熱エネルギーを与え、面としての引き締めを促す治療です。糸によるピンポイントの引き上げと、ハイフによる広範囲の引き締めを組み合わせることで、ほうれい線を含むフェイスライン全体の変化をより実感しやすくなります。
当院では群馬・上信越エリアで先駆けて導入したスーパーハイフRTやサーマジェン、オンダプロ(オンダリフト)といったエネルギーデバイスを取り扱っており、肌状態や希望する仕上がりに応じて糸リフトとの組み合わせをご提案しています。施術の順序や間隔は肌の状態によって異なるため、組み合わせを希望される場合はカウンセリング時に医師へご相談ください。
施術後のダウンタイム:腫れ・つっぱりはどのくらい続くか
糸リフトは切開を伴わない施術ですが、糸を挿入する以上、一定のダウンタイムが生じます。施術直後から数日は、挿入部を中心に腫れやむくみ、内出血が出ることがあります。皮膚を糸で引き上げるため、頬から口元にかけてつっぱるような感覚を伴うこともありますが、これは組織が新しい位置に馴染んでいく過程で自然に和らいでいきます。
一般的な経過としては、強い腫れやむくみは数日でピークを越え、1週間前後で日常生活に支障のない程度まで落ち着く方が多い傾向にあります。つっぱり感については、個人差はあるものの2週間程度で徐々に軽減していくケースが目立ちます。まれに、糸の挿入部にひきつれや左右差を感じることがありますが、多くは組織が馴染むにつれて目立たなくなります。
ダウンタイム中は、強く顔を圧迫するようなマッサージや、うつ伏せでの睡眠、激しい表情の動きを避けることが望ましいとされています。気になる症状が長引く場合や強い痛みを伴う場合は、自己判断せずに施術を受けたクリニックへ早めに相談することが大切です。
カウンセリングで確認すべきポイント
糸リフトでほうれい線治療を検討する際は、カウンセリングでいくつかの点を確認しておくと、施術後の満足度につながりやすくなります。
まず、自分のほうれい線がたるみ由来なのか、骨格や脂肪量由来なのかを医師に診てもらい、糸リフトがどの程度効果を発揮しやすいタイプかを確認することが重要です。次に、使用する糸の種類や本数、挿入する方向によって仕上がりの印象が変わるため、どのような設計で施術するのかを具体的に説明してもらうと安心です。
また、ダウンタイムの経過や、効果の持続期間、次回のメンテナンス時期の目安についても事前に聞いておくと、施術後の生活設計がしやすくなります。ヒアルロン酸注入やハイフなど他の治療との組み合わせを希望する場合は、それぞれの施術の役割分担や順序についても質問しておくとよいでしょう。
最後に、症例写真や施術実績を確認し、自分の悩みに近いケースでどのような変化が得られているかを見せてもらうことも、治療前の判断材料として役立ちます。
よくある質問
Q1. 糸リフトは何本入れればほうれい線に効果がありますか
必要な本数は、たるみの程度や頬の脂肪量、目指す仕上がりによって異なります。少ない本数でもピンポイントに引き上げることで変化を感じられる方もいれば、頬全体のボリュームが大きい場合はやや多めの本数で面として支える設計が向くこともあります。診察で骨格や脂肪の状態を確認した上で、医師が適切な本数を提案します。
Q2. 糸リフトの効果はどのくらいで実感できますか
物理的な引き上げによる変化は施術直後から実感しやすいのが特徴です。一方でコラーゲン生成による肌質の変化は、数週間から数か月かけて徐々に表れてきます。腫れが引いた後の状態が、ある程度落ち着いた仕上がりの目安になります。
Q3. 糸リフトを受けた後、痛みはありますか
施術中は局所麻酔を使用するため強い痛みは感じにくいですが、麻酔が切れた後は挿入部につっぱり感や鈍い痛みを感じることがあります。多くの場合は数日から1週間程度で落ち着いていきます。
Q4. 糸リフトとほうれい線用のヒアルロン酸注入は同時に受けられますか
肌状態や治療計画によって判断が異なるため、一律にお答えすることは難しい部分です。組み合わせを希望される場合は、カウンセリングで現在の肌状態を確認した上で、医師が適切な進め方を提案します。
Q5. 糸リフトの効果が薄れてきたら、また糸リフトを受けるべきですか
効果の感じ方や肌の変化は個人差があるため、次回の施術内容は前回からの経過を踏まえて判断することが望ましいです。糸リフトを継続する場合もあれば、ハイフなどのエネルギーデバイスを組み合わせてメンテナンスする方法が適している場合もあります。
Q6. 糸リフトでほうれい線以外にどのような部位も改善できますか
糸リフトは頬のたるみやフェイスラインのもたつき、マリオネットラインなど、下垂によって生じる複数の悩みに対応できる施術です。ほうれい線と合わせて気になる部位がある場合は、カウンセリングで相談すると全体のバランスを踏まえた提案を受けられます。
Q7. ダウンタイム中に気をつけることはありますか
施術後しばらくは、顔を強く圧迫するマッサージやうつ伏せでの睡眠、長時間の入浴や飲酒などの血行を強く促す行為は控えることが望ましいとされています。腫れや違和感が想定より長引く場合は、自己判断せずに施術を受けたクリニックに相談してください。
監修医師プロフィール
高橋渉(たかはし わたる) 医学博士・東京大学大学院修了 高崎CLINIC W 院長
東京大学大学院にて医学博士号を取得。診察・診断は院長自らが担当し、注入・外科的処置についても医師本人が施術を行う体制のもと、患者一人ひとりの肌状態に合わせた治療計画を提案している。
クリニック情報
高崎CLINIC W
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